五月の漢詩
2018年5月30日
土浦市一中公民館、水曜日10~12時。
月末(第4週)は、漢詩。
4月・5月が見頃の牡丹(ぼたん)ですが、今年は4月中に牡丹の見頃は終わってしまいました。日本では牡丹を花の代表とはあまり考えないようですが、中国ではかなりその地位が高いようです。
今日は、その牡丹について詠った皮日休の「牡丹」を勉強しました。皮日休(830年代~883年)は、晩唐の詩人で官僚でもありました。ネットには、「革命的社会派の学者である。」と有りましたが、この詩からは、そのような雰囲気はありません。ただ、花としての牡丹を褒め称えています。
Mǔdān
牡 丹 Pí rì xiū
皮日休 (唐)
Luò jǐn cán hóng shǐ tǔ fāng
落尽残红始吐芳,
Jiā míng huàn zuò bǎihuā wáng.
佳名唤作百花王。
Jìng kuā tiānxià wúshuāng yàn,
竟夸天下无双艳,
Dúzhàn rénjiān dì yī xiāng.
独占人间第一香。
<訳>
牡丹は春の花が全て散った後に咲き始め、
その素晴らしい名は「百花の王」と称される。
牡丹は天下に並ぶものの無い艶やかさを誇り、
この世で最も芳しい花たる地位を独り占めにする。
(https://ameblo.jp/sasurai-tran/entry-11234745158.html 参照)
落尽:「花が散り尽くす」ことを意味している
残红:散り残りの花(初春から順次咲いてきて、散っていった花々の中で、未だ残っている花のこと)
吐芳:「かぐわしい薫りを出す」という意味で、花が咲くことを指している。
佳名:美しい名前
唤作:「呼ぶ」の意味。「換」ではなく「喚」であることに注意。
竟夸:競って誇る
无双:並ぶものがない(ほど優れている)
人间:この世、人間の住む世界
今年、つくばの牡丹園で写した写真です。どれも牡丹でしょうか。シャクヤク(芍薬)との区別がつかなくて・・・。
本文中の言葉で、「佳名」は、国語辞典にはあまり載っていないようだけど、広辞苑には「よい名、よい評判」と有りました。「佳」は、「すぐれて良いこと、うつくしいこと」を意味しており、中国語の「佳 jiā」と意味はよく似ているようだ。
「天下无双」という言葉は、日本でもたまに使うことがあるように思うけど、この出典は、「史記」(前漢の武帝の時代に司馬遷によって編纂された中国の歴史書)の李将軍伝が出典のようだ。
「艳 yàn」という字は「艶」の簡体字。「うつくしい、鮮やか、色っぽい」というイメージのようで、日本語と似ているが、日本語では、後半のイメージが強いように思う。先生によれば、女性の名前にこの字を使うことも多く、今回出てきた「芳 fāng」や、さらには「丽 lì」「静 jìng」なども良く使われるそうだ。
今回は、いろいろ花についての話題がでた。「それぞれの参加者の好きな花は何か?」という質問に対しては、それぞれ違う花であったり、「花はすきだけど、特に特定の花が好きというわけではない」という意見もあった。日本では花というと「さくら」で、中国では「うめ」という話しがあったように思うが、牡丹は中国では公園などにも良く咲いていて、比較的身近な花なのでしょう。
「香」については、「良い香りだ」というときに「好香 Hǎo xiāng」といえば良いと思っていたら、「香香 Xiāngxiāng」や「真香 Zhēnxiāng」でも良いですよとのこと。上野動物園のパンダの「香香」は、「良い香り」ということになるなあ。
牡丹はそれほど香りのある花ではないので、この詩にあるように、香りがすばらしいというイメージは皆持っていなかった。中国の牡丹は、結構香りがするのだろうかと話題になった。残念ながら、今年の牡丹は散ってしまったので、香りを嗅ぐのは来年になりそう。