土浦中国語 四月の漢詩

424

 

今日の漢詩は、杜甫 Dùfǔ712-770年)の「絶句二首 其一」でした。二首連作の第一首で、第二首(其二)も結構有名な詩です。杜甫53歳の作とされています。李白が「詩仙」と呼ばれるのに対し、杜甫は「詩聖」とよばれます。安史の乱で捕らわれたのち、左遷なども経験し、官職をすてて、四川・成都の草堂で家族と穏やかな春を迎えた時の詩。その後、また流浪の旅を余儀なくされて、旅の途中、船のなかで亡くなります(享年59歳)。

 

成都の草堂(故居 gùjū, 昔住んでいたところ)は、博物館になっているとのこと。住んでいた4年間に250首ほど作ったといわれている。いま残っている杜甫の詩の数は、約1,500首。

 

 

绝句二首 其一   Juéjù èr shǒu qí yī

     (唐)杜甫   (Táng) Dùfǔ

迟日江山丽     Chí rì jiāngshān lì

风花草香     Chūnfēng huācǎo xiāng

泥融飞燕子     Ní róng fēi yànzi

沙暖睡鸳鸯     Shā nuǎn shuì yuānyāng

 

<訳>

暮れるのが遅くなった春の日。川も山も麗しく、春風が草花の芳しい香りを運んでくる。泥がとけて、燕は巣作りのために飛び交い、川辺の温もった砂の上には、おしどりが眠っている。

https://www.epochtimes.jp/jp/2012/04/html/d59445.html

 

 

迟日 chírì: 春の日のこと。日が長くなって、暮れるのが遅くなるから。

  Baidu知道では、「迟日」の意味に対して、「代指春天(春の日を指す)」、「春天渐长,所以说迟日。(春の日はだんだん長くなるので、迟日という)」と答えられていた。

江山 jiāngshān: 川と山のこと。「江」は杜甫草堂のすぐ近くを流れる浣花渓(錦江の支流)を指す、とも解説されている。

泥融 níróng: 凍りついていた泥が春の日差しで融ける

燕子 yànzi: つばめ。「子」は接尾辞。比較的小さいものに付ける言葉。

shā: 川辺の砂のこと。「砂 shā」は、「沙 shā」よりもつぶのやや大きいものをさし、書き言葉や科学用語などで用いられる。普通、「沙」がよく使われる。

鸳鸯 yuānyāng: オシドリ。「鴛」はオシドリの雄、「鴦」は雌。鸯は軽声 yang で読むこともある。

(上記解説の一部は、https://kanbun.info/syubu/zekku21toho.html を参照)

 

のどかな春の風情が伝わってきて、気持ちが良いですが、杜甫の人生を考えると、そののどかな様子が、逆に一抹の寂しさをもたらす気もします。