十月の漢詩
2018年10月24日
今日の漢詩は、北宋の苏轼 Sū Shì(蘇軾, 蘇東坡)の「贈劉景文」でした。
苏轼の詩は、昨年五月に「饮湖上初晴后雨 Yǐn húshàng chū qíng hòu yǔ」を、今年の一月には「题西林壁 Tí xīlín bì」を学びました。
苏轼とともに、その父親(苏洵)と弟(苏辙)も有名で、「三苏」と称される。古文の唐宋八大家 Táng sòng bādà jiā といえば、この三人を含め、他に、韓愈(韩愈, Hán Yù)、柳宗元(Liǔ Zōngyuán)、欧陽脩(欧阳修, Ōu Yángxiū)、曾鞏(そうきょう, 曾巩, Céng Gǒng)、王安石(Wáng Ānshí)の五人がはいっている。苏轼は、中国では人気が高いそうだ。また、彼の生きた北宋時代は、とても良い時代であったろうと捉えている人も多いそうだ。
苏轼は、詩人で書道家、随筆家であり、官僚でもあった。数回に渡り左遷されている。左遷先の黄州(現在の湖北省黄州区)で、自身が農作業を行っていた場所に因んで「東坡居士」と号した。苏东坡 Sū Dōngpō と呼ばれるのは、このことに由来する。また、黄州の豚肉に目をつけ、東坡肉の原型となる「紅焼肉(hóng shāoròu、豚肉の醤油煮)」を考案した。その次の左遷先、杭州では、西湖の水利工事を行っている。工事に貢献した人たちに振る舞われた紅焼肉を、人々が、「東坡肉 Dōngpō ròu」と名付け、杭州の名物となった。彼は、左遷されていた時期に、有名な詩を多く書いている。
(一部、Wikipediaを参照)
東坡肉 Dōngpō ròu (よく見ると、中華料理店で食べたことがありそう)
写真は、https://www.youtube.com/watch?v=CEFZD7g52bs
https://www.taobao.com/list/product/东坡肉熟食.htm より
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赠刘景文 Zèng Liú Jǐngwén
(北宋)苏轼 (Běi Sòng) Sū Shì
荷尽已无擎雨盖 Hé jìn yǐ wú qíng yǔ gài
菊残犹有傲霜枝 Jú cán yóu yǒu ào shuāng zhī
一年好景君须记 Yì nián hǎojǐng jūn xū jì
正是橙黄橘绿时 Zhèng shì chéng huáng jú lǜ shí
贈劉景文
荷尽已無擎雨蓋
菊残猶有傲霜枝
一年好景君須記
正是橙黄橘緑時
<訳>
蓮の花は枯れ、
傘のように雨を受けていた葉も、今は無い。
菊の花は凋み、何本かの枝が
霜に耐えて伸びている。
一年のうち最も景色の美しいこの時期。
ぜひ記憶に留めてほしい。
ユズ(ダイダイ)は黄色く色づきミカン(タチバナ)はまだ緑色。
ちょうどそんな時期だ。
(http://kanshi.roudokus.com/ryuukeibun.html)
初冬の作とされている。ある中国のサイトでは、「贈劉景文 / 冬景」という標題になっていた。作者から友人の刘景文(刘季孫)にこの詩が贈られており、何かのメッセージが含まれていると思われる。
「荷」は、ハス(蓮)のこと、七月の漢詩、杨万里の「小池 Xiǎochí」にも出てきた。
「傲」は、普通「傲慢である、おごる」と言う意味だが、ここでは「しのぐ、ものともしない」の意味。
起句と承句は対句になっている。
「荷尽 已無 擎雨蓋」
「菊残 猶有 傲霜枝」
(http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/shi4_08/pbt_shi232.htm)
この詩には4つの色が読み込まれている。蓮の花のピンク、菊の花の白、橙の黄色、蜜柑の緑
(https://ameblo.jp/sasurai-tran/entry-11078115479.html)
中国のネット上でみると、55歳の少し前の頃の詩と思われ、相手の刘景文は58歳のようだ。
この詩のメッセージは、わかりにくいけれど、次の様な解説がネット上にあった。
「あれ程美しかった蓮の花も葉もなくなり、香り高く咲き誇っていた菊の花も霜枯れてしまった。けれど、その枝は誇り高く霜に立ち向かっている。そして橙やみかんの木は豊かな実を付けて輝いている。我々の人生も、実にこれから実りの季節を迎えるのだよ。」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1179800111